空調

エアコンでは全く当てはまらない「大は小を兼ねる」

住宅の冷暖房にとって欠かせないのがエアコン

東海地方において最も使われている冷暖房器具と言えば「エアコン」です。

昔は居間に一台あればすごいねというものでしたが、時代が進み、人がいる部屋には大体ついているというところまでやってきました。

エアコンを選ぼうと思って家電量販店に行ったことのある方は分かると思いますが、

ものすごく沢山の種類があります。

エアコンを選ぶ基準は?

調べれば、ちゃんと全部違うんです。

しかし、このエアコン、

間違った機器選定をすると、

大変なエネルギーロスが生じてしまう事をご存知の方は少ないと思います。

性能の良い住宅では残念な事になりがち

普通、エアコンを選ぶ際の判断基準って、能力と金額ですよね。

エアコンの6畳用は当てにならない

エアコンを選ぶときに大事なことは小さい文字で書いてあるものです

能力については、一般的には畳数表示がされています。

この畳数表示、実は全くと言っていいほどあてになりません。

日本で昔建てられていた、ほぼ無断熱の住宅が基準となっています。

普通の水筒と、魔法瓶の水筒、同じだけの時間冷やして持ち歩くのに、氷の量は同じでしょうか。

違いますよね。

魔法瓶の方が、少ない氷の量でも冷たさを維持できます。

住宅も同じです。

断熱性の高い建物の方が、氷の量(エアコンの能力)は少なくても済みます。

氷が溶けにくいのは、ガラスコップ・紙コップ・断熱マグ?

新しい家に住む殆どの人は、無駄に能力が大きく、金額の高いエアコンを買わされていると言っても過言ではありません。

「大は小を兼ねる」という言葉がありますが、エアコンは能力の大きなものを選んでおけば、能力の小さなものを兼ね備えてくれるなんてこともあるのではないでしょうか?

残念ながら、そうではありません。

レース専用に作られた車は渋滞などの低速運転には向きません。

逆に、軽自動車で高速道路の追い越し車線を走るのもエンジンへの負担が大きく適しているとは言えません。

エアコンにも、それぞれの能力に応じて最適な負荷が設定されています。

その最適な範囲を下回っても上回っても、効率が落ちてしまうのです。

という事で、エアコンに関しては単純に大は小を兼ねるとは言えないのです。

エアコンの効率を表す数字とは?

エアコンの効率はCOP、またはAPFという数字で表されます。

ざっくり説明しますと、

COPはその瞬間の効率を表し、

APFは一年を通しての効率を表します。

同じ2.2kwのエアコンでも、APFはまちまち。

COPやAPFが3.0という数字になりますと、1の電力に対して、3の熱を出してくれている状態という事です。

従来の熱源ですと、効率が1.0を超える事は無かったのですが、ヒートポンプ技術により効率が1.0以上になるのがエアコンの最大のメリットです。

条件が良ければCOPは6.0とか7.0なんていう数字になる事も。

だからこそ、エアコンが気持ちよく運転できる機器選定や環境を整えてあげる事は、エアコンの効率、ひいては光熱費の削減に大きな意味を持つのですね。

エアコンは定格出力に対して、大体7~8割くらいの負荷で運転をするのが一番良い効率が出ると言われています。

今では少し研究が進み、最大出力の5割くらいの負荷が良いと言われております。

車も同じで、アクセルべた踏みよりも、50km/h程度でずっと運転している方が燃費が良いですよね。

エアコンの能力を生かす運転の仕方

それ以上やそれ以下の負荷率で運転を行おうとすると、

途端に効率が落ちてくるのです。

また、最近は定格出力の基準についてメーカー各社のばらつきが大きくなり、定格出力を基にした能力選定では誤差が大きい為、能力の最大値から機器の選定をするべきという考え方が主流になりつつあります。

定格能力とか最大能力とか、なんだか難しいように聞こえるかもしれませんが、エアコンのカタログや商品表示を見てみると、全てのエアコンには小さく目立たないように能力表示がなされております。

エアコンの電気代を計算してみよう

エアコン選びの基準

画像上のエアコンであれば、

冷房の最大能力が3.1kWで、暖房の最大能力は4.1kWです。

画像下のエアコンであれば、

冷房の最大能力が3.2kWで、暖房の最大能力は6.2kWです。

これは共に6畳用として売られている2.2kWの定格能力を持つエアコンですが、細かく見ていくと性能が違うわけですね。

下のエアコンの方がAPFも高く、高性能で高効率、ランニングコストも抑えらえるエアコンという事になります。

具体的にエアコンを選定していくにはどうするのでしょうか。

計算例を示してみたいと思います。

<計算例>効率の良いエアコン

例えば家全体で3kWの出力を得たいと思ってエアコンを取り付けたとします。

3.2kW(15畳用程度)が定格出力のエアコンを選んだ場合は、

負荷率が0.9くらいになりますので、COP補正は0.75くらいです。

定格運転でのCOPが6のエアコンを選んでいたとしますと、実効COPは4.5です。

3kW÷4.5=0.67kWとなり、1時間運転した際の冷暖房費は20円です。

24時間運転して480円、それを3か月継続したとすると43,200円になります。

上手く選定をすると、エアコンの効率は効率の良い範囲に納まりやすくなります。

エアコンの効率を可視化

大体黄色の色付きの範囲に収まっているのが分かりますでしょうか。

しかし、普通、15畳用と書いてあるエアコンで、家全体を冷やせたり温められると考える人はおらず、

かなり能力の大きいエアコンを取り付ける事になります。

建築屋さんや家電屋さんが不勉強な為、どんなに家の性能を上げようとも、

能力計算ではなく、単純な畳数表示で選んでしまうのです。

<計算例>効率の悪いエアコン

なので、こういう場合は7.1kW(30畳用)などのエアコンが取りつくことになります。

そうなると負荷率は0.4くらいになり、COP補正は0.5くらいです。

実効COPは3.0です。

3kW÷3.0=1.0kWとなり、1時間運転の際の冷暖房費は30円です。

24時間で720円、3か月で64,800円になります。

エアコンの効率を可視化

エアコンが効率よく運転できる黄色の範囲から大きく下回ってしまっております。

コレではエアコンは宝の持ち腐れです。

適切なエアコン選びで電気代も節約できる

冷暖房費の差額で、1シーズンで2万円くらいになります。

しかも、能力の高いエアコンは初期費用も高く、3.2kWと7.1kWのエアコンでは差額で30万円程高い買い物になります。

ただでさえ高いエアコンの機種選定をしてしまったうえに、毎月の冷暖房費も余分にかかるという、大変な事になります。

断熱材を厚くしてUA値やQ値を低くすると省エネな住宅になる事は間違いないのですが、

住宅の性能が上がるにつれて、様々な影響が出てきます。

それをしっかりと把握して、機器の選定や生活の提案をしていけるのがほんとうのプロだと思います。

後でお金がかからないエアコン選び

よく、「エアコンは自分たちで買ってきます」というお客様がいらっしゃいます。

しかし、選んだエアコンを見てとても残念な気持ちになる事も少なくありません。

恐らく、「安く抑えたい」という気持ちからそうおっしゃるのだと思いますが、

逆効果になる事が少なくありません。

家電量販店や町の家電屋さんに行くと

「どのくらいの大きさのお部屋に付けるのですか?」

と聞かれると思います。

しかし、本来であれば、

「どのくらいの熱損失のお部屋に付けるのですか?」

と聞くのが正解です。

畳数表示は一般の方への目安として表記してありますが、

エアコンの本来の指標は○○kWという、能力表示なのです。

家の負荷が4.0kWならエアコンも4.0kWの物を選ばなくてはなりません。

家の負荷がどの程度の値になるのかというのは、住宅の設計を

した人にしか計算が出来ないんですね。

しかし、今現在、殆どの住宅において、家の設計者さんが

この家の冷房負荷は○○kWですよ。暖房負荷は××kWですよ。

などと教えてくれることはありません。

だから、畳数表示でエアコンを選ばざるを得ないという状況になっています。

 

建てる時ににかかるお金だけ安くして、

後で掛かるお金は知りませんというのが今の住宅業界です。

生涯を通して家に掛かるお金を最小限に抑えるのが、住む人にとってのより大きなメリットにつながるのだと思います。

エアコン選びもそういう観点で行いたいですね。

 

 

さて、家づくり、失敗したくないですよね?

今回はエアコンのお話しでしたが、

家づくりにはまだまだたくさんの落とし穴があります。

家づくり失敗したなぁと思う人を一人でも減らせたらと思い、

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森 亨介(こうすけ)

国立岐阜工業高等専門学校建築学科卒業 建築環境工学を専攻する。 生涯コストが最も安くなる家を作る事を提唱し、普及に努めている。 凰建設株式会社代表取締役 一般社団法人ミライの住宅代表理事 一般社団法人パッシブハウスジャパン東海支部エリアリーダー

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