凰建設の森です。
高気密高断熱住宅にすると、家の基本性能がぐっと上がります。
そうすると、基本的にはどんな冷暖房器具を選んでも、普通の家よりはずっと暖かく、かつ涼しく過ごすことが可能になります。
それだけでも従来の家と比べればとても快適で省エネな暮らしになるのですが、せっかくこだわった高気密高断熱住宅ですので、エアコンをはじめとする省エネ設備にも目を向けて選ぶといいですね。
そんな、高気密高断熱専用のエアコンの選び方について解説したいと思います。
Contents
高気密高断熱住宅のエアコンの問題点
高気密高断熱住宅にすると、エアコンの選び方や運転の仕方がそれ以外の家とは大きく変わってきます。
今まで使っていたエアコンと同じ感覚ではうまくいかないという点が問題点だと言えると思います。
機器の選定を間違えると、正しくエアコンが動いてくれなかったり、ものすごく過剰な温湿度環境になってしまったり。
そういう問題点が出てくる事もありますので気を付けましょう。
正しく知識を身に付ける事が大事ですね。
高気密高断熱住宅は1台のエアコンでいいの?
よく、エアコン一台で家中暖かい/涼しいという宣伝文句を聞くかと思います。これは条件さえ当てはまれば本当です。
その条件というのが2つあります。
1、部屋などで仕切られずに空気がつながっていて、暖房用なら1階に付いている事、冷房用なら家の中の一番高いところについている事
2、家中に空気を送る設備がある事。
この2つのどちらにも当てはまらない場合は、1台のエアコンで家中を暖めたり冷やしたりするのは無理です。
また、1台で空調をすることが必ずしもいい事ばかりとは限りません。
エアコンは室内機の中に強力な熱や冷気があり、それを風に当てる事により空気を通して家の中に熱や冷気を供給する設備です。
室内機が存在する場所が最も暖かく、涼しくなり、遠い場所は熱が届きにくくなります。それなりに大きな家であれば、エアコンは無理して1台にするのではなく、2台にして熱源を分散させた方が家の温度ムラが軽減されます。
高気密高断熱住宅のエアコンの位置はどこがいい?
通常、エアコンの設置位置は部屋の中でも天井付近に取り付ける事が多いです。
こうなっている理由として、暖房で運転する時は、下に向かって空気を吹き出せば、暖かい空気は勝手に上に上がって行き、空間の温度を均一にしてくれますし、冷房で運転する際は、エアコンから水平に吹き出した冷たい空気は勝手に下に降りていき、やはり空間の温度を均一にしてくれるからです。
普通の壁掛けエアコンは、自分より高い部分の空気を冷やすことは出来ません。また、自分よりも3m以上下にある空間を暖める事も難しいです。
それよりも上を冷やしたり、下を暖めたりする場合は、その冷気や暖気を上げ下げする設備が必要です。
お手軽なところでシーリングファンですが、エアコンから出る空気は600㎥/h程度と、大変多く、送り届けたい冷気暖気に相当する量の空気が動かせる物かどうかという計算は必須になります。
各部屋にエアコンが取り付いている場合は問題ありませんが、家中の冷暖房を一つのエアコンで行いたいという場合は、冷房用のエアコンであれば、家の一番高いところに。暖房用のエアコンであれば、家のなるべく低いところにというのが、定石と言えます。
1台で動かすのであれば、上下の空気を600㎥程度動かすことの出来るファンなどが必要になってきます。
高気密高断熱住宅のエアコンの選定方法は?
ここが最も高気密高断熱住宅にエアコンを取り付けて冷暖房する際の肝になってきます。
通常、エアコンはそれ単体が持つ最大能力の50%程度が最も効率よく運転が出来る設備になります。
よく、最も寒い時期や最も暑い時期の最大負荷に合わせてエアコンの容量を選定する方法をお勧めされる方もいらっしゃいますが、実際にはそのピークがずっと続くという事もないわけでして、冷房や暖房をよく使う期間全体を通して、エアコンが最も効率的に動いてくれるような選定をしなければなりません。なので、エアコンを選ぶ際は、一つの公式だけで計算をするのではなく、時間軸も考慮した、冷暖房期間を通じた効率をシミュレートして取り付けるのが正解です。
また、夏と冬ではエアコンの挙動が大きく変わります。冬においては、エアコンは空気を暖める役割だけを果たす機械ですが、夏においては、エアコンは空気を冷やす役割と、空気を除湿する役割の両方を果たす機械になります。
夏によくあるのは、日中は外気温も高いし、日射の取得熱もある為、エアコンが適正に動いてくれるのですが、夜になり、外気温も下がり、日射の取得熱が下がると、エアコンも止まってしまいます。冷却という面ではそれでも良いのですが、エアコンが止まると除湿も止まります。空気の湿気量は昼でも夜でもほぼ変わりませんので、夜の間に大量の湿気が外から流入してしまうという事が発生します。そこを考慮してエアコンの選定をしなくてはなりません。
高気密高断熱住宅をエアコン暖房すると乾燥する?
エアコンに限らず、冬に暖房を運転すると、室内の空気は乾燥します。空気は温度が上がると含むことが出来る水分の量が飛躍的に多くなります。気温5℃で湿度80%の空気を20℃まで温めると、およそ29%くらいの湿度になってしまいます。22℃まで温めると26%。24℃であれば23%です。エアコンの吹き出し口の空気温度は約40℃ですが、その場合、湿度は9%程度です。
エアコンの風が当たる場所だと、より乾燥を感じやすくなってしまいます。
エアコン以外の暖房が乾燥しにくいかというと、決してそうではありません。空気の性質として、暖められれば相対湿度は下がります。ただ、石油ストーブの様に、暖めつつ、大量の水分を放出させる設備や、パネルヒーターの様に、風の出ない暖房と比べると、エアコンは最も乾燥を感じやすい設備と言えるかもしれません。
高気密高断熱住宅をエアコン冷房すると寒い?
稀に、高気密高断熱の住宅で、冷房を付けるとものすごく寒いと言われることがあります。
これはいくつか理由がありますが、最も多い理由としては、エアコンの容量選定が間違っているというものです。
必要な能力よりも過大すぎるエアコンを選んだ場合、冷えすぎてしまい、丁度良い温度設定が出来ないという事が発生致します。
高速道路の渋滞でレース仕様のスポーツカーに乗っているようなもので、ちょっとアクセルを踏むとものすごい加速で前の車に突っ込みそうになり、慌ててブレーキを踏むような運転になっている可能性があります。
家のQ値が分かれば、Q値×床面積×0.02(地域によって数字は違います)を計算してみて下さい。例えば、Q値2.0×120㎡×0.02=4.8という数字が出てきたとします。家の中にあるエアコンの能力値の合計が4.8であれば、この家は十分に冷えるという意味です。2.2kWが大体6畳用のエアコンですので、6畳用のエアコンが3台程度あれば、十分なはずです。しかし、多くの家では4.0kW(14畳用)の物が1階と2階に付いていたりしますので、必要な量の倍以上の能力があり、冷えすぎてしまうという事が発生するのです。
高気密高断熱住宅はエアコンで除湿できるの?
高気密高断熱の家の夏の真価はその除湿効果の高さにあると言っても過言ではありません。家中の隙間をふさぐのは、熱以上に、湿気を家の中に入れないという意味合いが大きいです。そのため、従来のスカスカの家ではできなかった、エアコンによる除湿というのを大いに期待してください。
ただ、ここでも気を付けて頂きたいのは、エアコンというのは除湿の為に作られたものではなく、あくまでも空気の冷却のために作られた設備になります。冷却をする過程で、結露水が発生し、それを家の外に捨てるため、結果として除湿も出来ているという事になります。
という事は、過大な設備になってしまい、あっという間に家の中の空気温度が冷えて、エアコンが止まってしまうと、そこで除湿も止まってしまいます。湿気は、24時間換気の空気の流れに乗って、休むことなく家の中に入ってきますので、エアコンが止まらない様、家の性能とエアコンの性能のバランスを取らないといけないのですね。
高気密高断熱住宅のエアコンは後付けしてもいいの?
絶対にダメと言う訳ではありませんが、これはあまりお勧めいたしません。なぜかというと、高気密高断熱の家の肝である、家の気密性能と防湿性能が、後付けの穴をあける際に台無しになってしまう可能性があるからです。壁の構成や使っている断熱材の種類などによっても、若干差は出ますが、もし、エアコンを後付けするのであれば、防湿気密処理を完璧に補強しなくてはなりません。
間違っても、大手家電量販店の人が、内装の上からガーっと穴をあけるような施工はしてはいけません。
高気密高断熱住宅のエアコンはつけっぱなしがお得?
特に夏になると、暑い地域では一日中除湿の為にエネルギーが必要になります。エアコンが電気を消費するのは主に室外機のコンプレッサーが冷媒を圧縮している時です。コンプレッサーは、インバーター機能がついており、回転数をある程度コントロールすることが出来るのですが、車のエンジンと同じように、最も効率の良い回転数というのが機種ごとに決まっています。その回転数で安定して運転しているのが最も省エネ性能が高い状態になります。オンとオフを繰り返すと、オンの時はアクセル全開、オフの時は動かないという、非常に燃費の悪い車の運転の仕方と同じになってしまいます。
同じ距離を走ろうと思ったら(同じだけ涼しい暮らしをしようと思ったら)アクセルオンとオフを細かく繰り返す運転よりも、効率の良い速度で安定して走った方が燃費は良いです。
なので、高気密高断熱の家であれば、夏は基本的にエアコンは連続運転した方がお得になります。
高気密高断熱住宅のエアコンの設定温度のお勧めは?
高気密高断熱の住宅とそうでない住宅を比べた場合、例えば同じ室温が20℃であったとしても、感じる暖かさは高気密高断熱の住宅の方が上になります。足元の冷気もなければ、窓からの放射冷却も感じにくい為、空気温度が同じでも体感温度は高気密高断熱の住宅の方が暖かく感じます。
なので、あなたが今の自宅で「寒くない」と感じる温度が24度だったとすると、大体2度程、高気密高断熱の住宅の温度は下げても大丈夫になります。勿論個人差がありますので、自分がどれくらい暖かい環境に居なくてはならないかは、一概には言えません。
全然寒くないと思うのであれば、18度くらいで生活をしても大丈夫です。
高気密高断熱住宅のエアコンの取り付けでの注意点。
高気密高断熱の家ではとかくエアコンの能力が過大になり過ぎる傾向があります。個室に一つずつエアコンを取り付けるのではなく、なるべく一つのエアコンが沢山の容積を担当するようにした方がエアコンの性能を上手に生かすことが出来ます。
リビングに吹き抜けがあるのであれば、リビング+2階の吹き抜け周りの空間を担当してもらうようにしたいですし、家全体の空間がつながっているのであれば、家全体を一つのエアコンで賄うような計画にした方がエアコンの性能を十分に発揮することが出来ます。
また、暖かい空気は上に上がり、冷たい空気は下に下ります。
この空気の流れを逆流させるためには結構なエネルギーが必要になります。出来るだけ、冷房で使うエアコンは上に取り付け、暖房で使うエアコンは下に取り付ける方が望ましいです。
高気密高断熱住宅のエアコン電気代の計算方法。
高気密高断熱のエアコン電気代の計算方法は簡単にシミュレートすることが出来ます。
家の性能(Q値)×家の床面積(㎡)×地域のデグリーアワー(℃h)÷エアコンの性能(COP)÷1000(Wh→kWh)×電気料金(円/kWh)
が計算式になります。例えば岐阜県岐阜市で夏に27度、冬に20度で一定の室温を作ろうと思うと、デグリーアワーは約53000になります。
エアコンのCOPは機種によって違いますが、カタログに記載のAPFの半分弱というのが2020年現在の平均値だと思います。
という事で、例えばQ値1.0、面積120㎡、電気料金が28円/kWhだったとすると、
1.0×120×53000÷3÷1000×28=59360円となり、年間で約6万円の電気代がかかることが予想されます。
Q値が3.0程度の一般住宅ですと、単純に3倍の18万円程度が掛かります。更に、高気密ではない建物の場合、20度ではまだ寒さを感じる為、設定温度を上げなくては同じ暖かさだと感じる事が出来ません。
年間に20万円以上の冷暖房費。多分、びっくりしますよね。それ以外に照明を付けたりする電気代もかかるわけですから。
だから、性能が足りない家の場合は、暖房する範囲を狭めたり、暖房の設定温度を下げたりする「我慢」が発生する訳ですね。
住宅の性能とエアコンの性能は車の両輪です。
しかも計画出来るのは家を建てる最初の段階だけ。
しっかり計算して、失敗や後悔の無い、住宅性能とエアコンの性能を選んでくださいませ。
さて、今回はエアコンのお話しでしたが、
家づくりにはまだまだたくさんの落とし穴があります。
家づくり失敗したなぁと思う人を一人でも減らせたらと思い、
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