家を建てるに限らず、建築工事を頼むときには見積もりを貰います。
ところが、この見積もり、会社によって、結構違います。
見積もりの計算方法、表現方法、全てがばらばらです。
今日は、そんな建築業界の見積もりの話をしたいと思います。
その前に、世の中の利益構造のお話しを。
世の中の製品のすべての価格は、企業の原価に利益をのせて決められます。
どのくらいの利益を乗せるのかは業種業態商品によってバラバラです。
例えば、薬。薬の利益率は80%~90%以上です。
1000円の風邪薬の原価は100円以下という事ですね。
決してボッタくっているわけではなく、薬の開発には膨大なお金と時間がかかるため、それを回収するのには高い利益率で売らなくてはならないという事です。
余談ですがドラッグストアは、利益率の高い薬を沢山売りたいので、ティッシュなどの日用品を安売りしてお客さんを集めます。
例えば、服、服の利益率は30%~40%前後です。
女性服は特に足が速いので(流行が廃れる)新商品のうちに、高い利益を得ておいて、季節の変わり目に合わせて原価で叩き売ります。
福袋などもいい例ですね。
例えば100円ショップ、利益率は数%です。
だからとにかく店舗を増やして数を稼がないとやっていけないわけですね。
形あるものを売る商売はこんな感じです。
では、形の無いものはどうでしょう。
例えばマッサージや美容院。
こちらは使う消耗品が微量のクリームやワックスの場合利益率は95%を超えます。なのでほぼ人件費だけを賄えればOKという事です。
では、建築業界の利益率とは、いったいどのくらいの物でしょうか。
こちらは、TVCMをやっている会社か、そうでないところかで、大きく利益率は変わります。
CMを出したり、住宅展示場に出店している会社の利益率はだいたい35%くらいです。
地域の工務店規模ですと大体20%くらいです。
うん?随分違うんですね。
そうなんです。なぜ、こうなるかと言うと、キー局にCMを出したりしている会社は年間に数億~数十憶円を掛けてます。
住宅展示場の出店も一軒あたり年間1000万円くらいかかります。
※地域によって出展料は随分違います
これを売値に転嫁しないといけないので、どうしても高くなります。
でも、中身は同じです。誰でも買える素材で、それぞれの地域の職人さんが作っています。
だから、CMをしている会社で3000万円の家(原価2000万円)を建てるのと、地域の工務店で2500万円(原価2000万円)の家を建てる事は、中身的には変わらないという事です。
定期的にお伝えする、建築業界の工事予定額推移(※国交省発表)
1㎡当たりの平均価格ですが、木造住宅が17万7千円、プレハブが24万9千円です。
それぞれ利益率が20%、35%だとすると
17万7千円の原価→14万1千円
24万9千円の原価→16万1千円
となります。
ちなみにですが、プレハブメーカーは16万円1千円で地場の工務店に仕事を依頼し、地場の工務店が1㎡当たり2万円の利益を得るのが業界の下請け構造になります。
※クリックで大きくなります。
同じ金額を払っても、建物本体に掛けてもらえるお金はずいぶん違います。
さて、大枠の話はこの辺で終わりです。
建築会社がどのように見積もりを作っているのかをお話ししていきます。
建築業界でかかるお金は非常に不透明だと感じる人も多いかもしれません。
建物を建てる際の見積もりは簡単に言うと、商品の原価に工事の人件費を足した金額に利益を乗せて決まります。
(原価+人件費)×利益率=見積金額となります。
高い安いというのは、大雑把に言えば、商品のモノが高いか、工事をするときの人件費が高い商品や工法なのか、どちらかが原因です。
だから、公共工事の見積もりなどでも、商品の価格と人件費の価格をなるべく分けて載せる事が推奨されております。
建築物の場合、非常に厄介なのが原価の開きが大きいという事です。
例えば照明器具
お値打ちペンダントライトです。
4,000円の物です。(※楽天より)
そしてこちら、普通に見えますがめっちゃ高いペンダントライトです。
価格、見えますか?(※クリックすると拡大します。同じく楽天より)
180,000円ですね。
この二つの商品、全く同じ明るさで光ります。
でも価格は40倍以上の開きがあります。
さっきの見積もりの式 (原価+人件費)×利益率=見積金額 に当てはめると
工務店の場合
(4000円+10000円)÷0.8=17,500円が安い照明の場合の金額
(180000円+10000円)÷0.8=237,500円が高い照明の場合の金額
CMしている会社の場合
(4000円+10000円)÷0.65=21,500円が安い照明の場合の金額
(180000円+10000円)÷0.65=292,300円が高い照明の場合の金額
これが「ペンダントライト 型番○○○○ 1か所 17,500円」
という形で見積書に記載されるわけですね。
この二つの照明器具に40倍の価値を感じることができるかどうかは、見る人それぞれの感性の問題ですね。
もうひとつ、大きな違いが生まれる項目、というかもう一つしかありませんが「人件費」です。
照明器具を交換する工事は決して電気屋さんでなくても、ちょっと器用な人であれば行う事は出来るかもしれません。
しかし、1人の職人さんが照明器具を持ってお客様の家まで行き、照明器具を一つ交換することで、半日くらい時間を使います。
職人さんが一か月に必要とするお金は大体50万円です。
その半分弱が、消耗品や道具の購入に当てられ、残った分から税金を払います。
ざっくりとですが、職人さんは一日2万円を稼がなくては食べていく事が出来ません。
なので、職人さんが半日動くと、人件費が1万円かかるのですね。
これが、ダウンライトなどの工事を伴う照明器具になると人件費の部分がより多くかかるようになり、
(4000円+15000円)÷0.8=23,,750円みたいな見積もりになります。
そして、新築時の様に、照明器具を沢山取り付けるとなると移動している間の無駄な時間が少なくなりますので、照明器具を1個当たり取り付ける時の人件費がどんどん割安になります。
なので、工事の少ないリフォーム時の人件費と工事の沢山ある新築時の人件費では新築時の方が割安になります。
また、建築工事には単独の職種だけではできない工事も沢山あります。
例えばトイレを作るという事を考えても、大工さん、電気屋さん水道屋さん、
内装業者さんと、沢山の人の手が掛かります。
それぞれの人がどれだけの時間や消耗品を使うかによって、
それぞれの人に掛かる人件費が変わります。
(大工さんの材料+大工さんの工事費)×利益
(電気屋さんの材料+電気屋さんの工事費)×利益
(水道屋さんの・・・・・・
(内装・・・・
・
・
と項目を書いていくと、単純な「トイレの増設」
という工事についても数十行、数百行の見積もりが必要です。
そこを細かく書くのももちろん有りですが、「そこまで書いてもらっても分からないし、、、」というお客様も一定数以上いらっしゃいます。
なので、そう大差ない部分については、「一式」という言葉でまとめましょうという流れができました。
それが行き過ぎていると、工事内容が分かりにくく、細かく書きすぎても検証しづらいという事になります。
なので、どこまでをまとめて、どこまでを分けて書くかそれが各社ばらばらなんですね。
建築物の見積もりと言うのは、そういう流れで出来ております。
原則はこの二つ。「物の価格」と「人の価格」です。
それをまとめたりばらしたりケースバイケースで色々な表示の仕方をしますので分かりにくくなります。
何となくお分かりいただけましたでしょうか?
さてちょっと余談になります。
最近よく言われるのが、ネットの価格って安いよね。です。
確かに安いです。私も買い物はネットで済ます事も多いです。
なぜ安いのか。経営的に言えば、徹底的に会社の経費負担を軽くしているからですね。商品を右から左に流すだけ。
なのでそれ単体で使える商品であれば、ネットで買うのも有りでしょう。
例えば、椅子などの家具は買えばすぐに使えます。
それが、食器棚になりますと、電気のコンセントが必要で、
その工事は当然別に手配をしなくてはなりません。
洗面化粧台なんかも売ってますが、電気に加えて給水、給湯、排水工事が
必要です。給湯器の能力が足りなければ給湯器の交換も発生します。
機能部分を抜き出して図にするとこんな感じです。
また、エアコンの様に、工事を伴い、かつネットに出ている本体だけでは何ともならず、冷媒管やそれを隠すスリムダクト、高低差によって追加せねばならない冷媒ガスなどが必要な物を素人がネットで買ってプロに支給というのは、高確率で発注ミスという事故が起こります。
※クリックで拡大します。ダイキンアメニティビルトインエアコンのページ
これは別ですあれは別ですと書いてあります。
最近は、材工分離で発注する形式も多いですが、発注ミスで工事ができず、工事の手間が余計にかかるという事もよくあります。その場合、職人さんは往復するだけでもお金が掛かっておりますので、更に工事費がかさむことになります。
そして、ネットで買った10万円を超えるもののサポートやサービスを受けた事はおありでしょうか。
遥かなるたらいまわしに合います。役所の窓口がかわいいと思えるくらいのものです。
先日、amazonで買ったヤマハの発電機の保証を使うためにamazonに連絡をしたのですが、3か所くらいにメールを送り、06-の番号や03-の番号や058-の番号や、いろんなところに電話を回され、最終的に近所のサービスセンターに自分で持ち込む形になりました。
色んな付帯工事が必要な複雑な商品や、サポート体制が大切になってくる商品をネットで揃えるのはある程度のリスクを伴います。
ネットで買うのは自分で責任を負える範囲のものだけにした方が良いと思います。 余談でした。
さて、今回は建築見積のお話しでしたが、
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家づくり失敗したなぁと思う人を一人でも減らせたらと思い、
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