伝統的な日本建築の軒は深い
屋根が壁よりもどれだけ外に伸びているのかを
軒の深さが深いとか浅いとか言います。
世界の国々を見ると、雨量の多い地域の軒は深く
雨量の少ない地域の軒は浅いのが一般的です。
日本はどうかといいますと、当然、雨量の多い国です。
なので、伝統的な日本建築は、軒を深くし、
雨を建物に寄せ付けないようにしてきました。
法隆寺の五重塔などは深い軒を短い間隔で重ねる事で
更に建物に雨が当たりにくくなり、建物の寿命を延ばす工夫です。
軒を全く出さない家づくり?
最近は屋根の工事費を抑えるために、軒を全く出さない家のつくり方も増えてきました。
LIXILさんが発信する規格型住宅、TRETTIOなどは、軒ゼロのスタイルです。
デザイン的にはすっきりしていて私も嫌いではありません。
日本の気候で軒ゼロをすると?
今は、多様な家のつくり方があるわけですが、
ここでも気を付けないといけないのは、
将来、軒の無い選択肢が吉と出るか凶と出るかということです。
そもそも雨かかりの多い日本の気候では、軒の無いデザインを選択すると
外壁の汚れるスピードはものすごく早い事になります。
某所にある有名な軒ゼロ分譲住宅通り。
何が有名かというと、
築年数ごとに、汚れのグラデーションがくっきり出ているという事です。
新築当初はTRETTIOと同じく、白っぽい箱状のデザインでかっこいいです。
ところがこの建物、TRETTIOとは違い、樹脂モルタルに塗装という仕上げです。
それが、8年経つとどうなるか、、、
お、おばけ屋敷ですか(;'∀')
たった8年でこの汚れ具合ですよ?
窓の下なんか、汚れとそうでないところがくっきりです。
一番手前の建物が新しく、奥に向かってだんだん古くなって行くのですが
なんとなく汚れのグラデーションができている感じ、分かりますでしょうか。
技術的には軒ゼロの納まりも可能ではあるのですが、作り方を間違えると
とんでもない事になります。
軒ゼロの家を美しく保つには?
前回のイージーメンテナンス、ノーメンテナンスという観点からすると
こちらの建物は、ハードメンテナンスです。
8年ごとに少なからぬお金を掛けて、メンテナンスをしていかなければ
美観を保つことは出来ません。
軒をゼロにするのであれば、軒が無くても大丈夫な外壁の
マテリアルを選ばなければなりません。
例えばTRETTIOは外壁にガルバリウムを使って
雨かかりに耐えられるような工夫をしております。
家を建てる時は、なるべく先の事を想像しながら建てなくてはなりません。
本来、建築会社は軒ゼロでモルタル塗りみたいな建物を提案する時は
「この建物は維持管理に莫大なお金が掛かります」
と宣言しておかなくては不誠実だと思います。
でも、そんなことは誰もやりません。
なぜなら、住宅業界は「損して得取れ」
「お客様には後でお金を頂きましょう」
という商習慣だからです。
そこまで言って、納得して家を建てていただけるお客様であれば、
それはそれでこだわりがあって良いと思います。
「笠木」があるだけでこの違い
軒と同じ役割をするものに「笠木」があります。
ベランダの手すりや外構のブロックの一番上にある壁厚よりも
少し幅の広い材料です。
これも、あるのとないのとでは大違い。
先日、リフォームの下見に行った際にお客様の家で見つけました。
コンクリートの擁壁に注目です。
手前部分は汚れており、途中、全く汚れていない部分があるの、分かります?
これ、お客様が掃除をしているとか、そういう事ではないんです。
擁壁の上にコンクリートブロックが積んでありますが、その一番上に、笠木が
ちゃんと乗っているんですね。
それだけで、この汚れの違い!
正面から見ると更に良く分かりますね。
同じ素材の建物の壁なら、笠木や軒がちゃんとあった方が、汚れは少ないです。
モルタル塗りの家ですが、ちょこっと出ている窓枠の下は綺麗でしたよね?
笠木や軒を出さないのであれば、汚れを覚悟するか、汚れない素材を使う。
この基本を無視した建物が、意外と多いのです。
後からお金の掛かる仕様にした方が、建築屋さんは儲かるからですね。
さて、今回は軒や笠木のお話しでしたが、
家づくりにはまだまだたくさんの落とし穴があります。
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