
質問 「遮熱って本当に効果あるの?」
「冷房費が下がるって本当?」
家づくりをご検討中の方から、そんなご質問をよくいただきます。
特に岐阜のような夏の暑さが厳しい地域では「遮熱の効果ってどうなの?」「断熱とはどう違うの?」「費用対効果はあるの?」といった疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。
実は、遮熱対策の中でももっともコストパフォーマンスが高いのは「外壁の色」という、ちょっと意外な事実があるのです。
今回の記事では、遮熱の基本的なしくみから実際の効果、断熱との違い、岐阜市で実施した実測データに基づく冷房費の試算まで、具体的な数字を交えながらわかりやすく解説します。
最後までお読みいただければ、家づくりにおける遮熱のあり方と、どこにお金をかけるべきかが見えてくるはずです。
Contents
遮熱の基本を熱の伝わり方とともに理解する
はじめに、遮熱の基本を確認しておきましょう。熱はどのようにして家の中へ入ってくるのでしょうか?
実は、熱の移動には以下の3つの方法があります。
- 伝導(でんどう)
物を通じて直接熱が伝わる現象です。たとえば、金属のスプーンの先を熱湯に入れたとき、スプーンの先だけでなく手元まで熱くなるのが伝導です。建物では、外の熱が壁材や屋根材を通じて室内に伝わる現象を指します。
- 対流(たいりゅう)
空気や水などが動いて熱を運ぶ現象です。例えば、暖房器具をつけたとき、部屋の上の方が先に暖かくなるのは、暖かい空気が上昇する対流が働いているからです。
- 輻射(ふくしゃ)
熱が赤外線のような形で空間を移動し、遠くの物体に届いて熱を伝える現象です。太陽の光が雲を通してでも肌に熱を感じさせるのは、輻射によるものです。
この中でも「遮熱」が対象とするのは輻射熱です。
そしてさらに重要なのが、輻射熱には2種類あるということです。
- 太陽から直接届く日射
高温で短波長の強いエネルギーを持っており、昼間に建物の外壁や屋根が熱くなる主な原因です。
- 建物や地面から出る常温輻射
低温・長波長の熱で、夜間や日陰でも発生します。建物の中からも発せられていて、冬の放射冷却にも関係します。
多くの遮熱材(たとえばアルミ箔を使った遮熱シートなど)が反射するのは、この常温輻射に対してです。つまり「反射率97%!」と書かれている製品も、実は太陽の光そのものではなく、室内や壁内での常温輻射に対して高い反射率を持つという意味になります。
これを知らずに「これを貼れば真夏の直射日光もバッチリ遮れる!」と誤解してしまうと、期待と実際の効果に差が出てしまうので注意が必要です。
遮熱と断熱の違いとは?
遮熱と断熱の違いについて疑問に思う方は少なくありません。どちらも家の快適性に関わる重要な要素ですが、その役割は全く異なります。家づくりやリフォームを成功させるためには、遮熱と断熱の違いを正確に理解しておくことが大切です。
ここで、両者の違いをしっかり理解し、それぞれの効果を正しく把握しておきましょう。
断熱とは、熱の移動、特に「伝導」や「対流」による熱の伝わりをできるだけ抑える工夫です。たとえば、冬に着るダウンジャケットや、温かい飲み物を入れておく魔法瓶が断熱の良い例です。これらは、外の寒さや熱が内部に伝わりにくく、また内部の温度が外に逃げにくいように作られています。
家でいえば、壁や屋根、床にグラスウールや発泡ウレタンなどの断熱材を入れることで、家全体を保温し、外気の影響を受けにくくする役割を持ちます。一年を通して、冬は暖かく、夏は涼しい室内環境を保つための基本となります。
遮熱とは、太陽からの「輻射熱(日射)」が建物の中に入る前に、表面で反射して外へ跳ね返してしまう技術です。鏡が光を反射するのと同じ原理で、日射に含まれる熱エネルギーを建物が吸収するのを防ぎます。夏の強い日差しを避けるために日傘を差したり、白い服を着たりするのに近い考え方です。
このように、遮熱と断熱はどちらが優れているというものではなく、達成したい目的(夏の暑さ対策か、冬の寒さ対策か、あるいは両方か)、住んでいる地域の気候、建物の状況、そして予算などを考慮して、適切に使い分ける、あるいは組み合わせていくことが重要になるのです。
岐阜で実際に行った遮熱のシミュレーション
では、遮熱がどの程度効果を発揮するのでしょうか。これは実際に検証してみる必要があります。
私たちは、岐阜県岐阜市で、外壁の色と遮熱材の有無によって冷房費がどれだけ変わるのかをシミュレーションしました。建物の性能に関して検証するとき、実際の地域の気象条件に基づいた数値を使って説明することは非常に重要です。岐阜県岐阜市のような夏の暑さが厳しい地域では、遮熱対策の有効性を評価するには最適な環境といえるでしょう。
実験の条件は次のとおりです。
条件
- 壁構成:窯業系サイディング + 通気層 + 構造用合板 + グラスウール100mm
※遮熱材使用モデルには、厚さ8mm・両面アルミ箔の遮熱材を通気層部分に追加
- 外壁の色は「白」と「黒」の2種類
この条件で、以下の4つの壁構成を比較しました。
4つのパターン
①黒い壁+遮熱材なし
②黒い壁+遮熱材あり
③白い壁+遮熱材なし
④白い壁+遮熱材あり
その結果、冷房費が最も安くなったのは④「白い壁+遮熱材あり」の組み合わせで、最も高かったのは①「黒い壁+遮熱材なし」でした。
引用:新建ハウジングDIGITAL 森亨介Eco is Money 第5回「遮熱」を数値と金額で考える
組み合わせによる熱の取得量は・・・
熱の取得量 遮熱といえば設備や素材に目が行きがちですが、外壁の色だけでも大きな差が出ることがこの結果から分かります。これは特に、コストパフォーマンスを重視したい方にとっては見逃せないポイントです。 ここで気になるのが「遮熱材を入れることで本当にお金は浮くのか?」という点です。 岐阜市での上記シミュレーションに基づき、遮熱材の有無による冷房費の違いを50年間分で計算してみると、以下のような結果になりました。 シュミレーション結果 この差は、導入費用と比較して「元が取れるかどうか」の判断材料となります。もし導入コストがこれ以上かかるなら、経済的なメリットはないといえるでしょう。 ここからは、さらに具体的な数値で効果を見ていきましょう。 条件 地域:岐阜県岐阜市 期間:2015年6月1日~9月30日(夏季) 時間帯:午後1時〜午後6時(西日が強い時間) 西側外壁面積:36㎡ 室温設定:25℃ 外気温:28℃ 日射量:平均330W/㎡ これらの条件で、白壁+遮熱材ありの外壁の場合 (※相当外気温・・・壁や屋根が実際に感じている暑さを温度で表したもの) (※U値・・・壁や窓がどれだけ熱を通しやすいかを表す数字) となり、これに基づいて計算すると、 輻射による熱取得量:26.3kWh 合計熱取得量:42.0kWh これを、COP3.0のエアコンで冷房した場合、電気代は約350円になりました。 (※COP ・・・「省エネ性能」を表す数字) このように、具体的な気象データと建物の構造を使って試算すると、遮熱の効果をかなり現実的に把握することができます。 遮熱は確かに効果のある対策ですが、すべてを遮熱だけでまかなえるわけではありません。 遮熱材は、特定の条件下では非常に高い性能を発揮しますが、その性能は主に日射が当たる部位に限られます。たとえば、北面の壁や基礎部分など、日射の影響が少ない場所では遮熱材の効果はほとんどありません。 そのため、住宅全体の快適性を高めるには、まずは断熱性能をきちんと整えることが基本になります。 凰建設では、まず建物全体の断熱・気密設計をしっかり行った上で、必要な部位に遮熱対策を組み合わせる、という設計を基本としています。 また、遮熱は「熱の侵入を減らす」という一方向の働きであるのに対し、断熱は「内外両方の熱の移動を緩やかにする」という特性があるため、年間を通して住宅の快適性や光熱費に大きく影響するのです。 今回の記事では、夏の快適性を左右する「遮熱」について、その基本原理から断熱との違い、実際の効果を岐阜市でのシミュレーション結果で示し、さらに重要な費用対効果まで詳しく見てきました。 最後に、大切なポイントをもう一度確認しましょう。 ポイント 家づくりでは、宣伝文句やイメージに流されず、データや根拠に基づいて判断することが非常に重要です。今回の情報が、皆さんが遮熱について正しく理解し、ご自身の状況や予算に合った賢い選択をするための一助となれば幸いです。 今回は遮熱の効果について紹介をしてきましたが、 家づくりにはまだまだたくさんの落とし穴があります。 「家づくりに失敗したなぁ」と思う人を一人でも減らせたらと思い、 ブログではとても書けない事をメルマガで発信しています。 また、メルマガに登録いただいた方には、 特別小冊子「家を建てる前に知らないと大変な事になるお金のはなし」 を特典として無料で差し上げております。 メールアドレスのみで大丈夫です。 下記フォームよりご登録くださいませ。 【実録】建築会社と担当者選びを失敗した理由
遮熱材の費用対効果を数値で確認
岐阜市での具体的な冷房費の試算
伝導による熱取得量:15.7kWh
遮熱に過剰な期待は禁物。まずは断熱から
遮熱対策の効果を正しく理解し、賢く選ぼう!
最後に