省エネで健康的な住宅をと考えていると、全ての住まい手とほとんどの作り手がぶち当たるのが「断熱材を何にしようか」というテーマです。
色んなサイトを見てもグラスウールはこれがダメ、ウレタンはこれがダメ、セルロースはこれがダメと、そんな情報ばかりで、じゃあ結局何が一番いい断熱材なの?と悩んでしまうお客様も少なくありません。
本当に悪い断熱材はどれ?
あまり意味のない比較ではありますが、「(代表的な断熱材) 欠陥」とgoogle先生に聞いてみた結果を貼り付けてみます。
まずはグラスウール、次にウレタン、ネオマフォーム、ポリスチレンフォーム、セルロースファイバー
件数だけ見ればウレタンが多いですが、ウレタンは断熱材だけではなく、世の中の様々な製品に使われておりますので、その検索結果も出てくるわけですね。
それで、本題ですが、本当に悪い断熱材というものはあるのでしょうか。
結論から言いますと、断熱材に良いも悪いもありません。よく、料理に例えるのですが家で使う断熱材は数ある食材のうちの一つです。
例えば芋だと思って貰っても構いません。もし、住む人がカレーライスみたいな家に住みたいと考えるのであれば、使うべき芋はジャガイモだと思います。シチューみたいな家ならサツマイモも有りかなと思います。煮物の家ならばサトイモ、山かけごはんの家ならナガイモやヤマトイモを使います。
断熱材も、作りたい家、理想の暮らしに合わせて使うというのが本当の使い方になります。
断熱材の違いは何で比べる?
断熱材を比べる際に、色々な物性データを比べますが、なぜか断熱材の話なのに透湿性能を一番に比べる人がいます。
家の外皮を設計するのに、トータルの透湿性能を計算することは大切な事です。
それをしっかり行わなければ家の内部で結露を起こし、家の耐久性と健康性を大きく損ないます。
しかし、湿気を通したり防いだりすることは必ずしも断熱材の役目ではありません。
芋の醍醐味は食感とボリューム感であり、サツマイモだとそれに甘みもついでに加わりますが、肉じゃが等で、甘さが欲しければ、砂糖を入れれば済みます。
むしろ砂糖を使った方がより甘くできます。
「熱容量」とは?
ウレタンやポリスチレンフォームの一部商品は透湿抵抗が高く、湿気の移動を止める力もありますが、やはり、断熱材の本来の役目は熱の移動を止める事です。まずはそちらの性能をきっちりと押さえる事が大切です。
では、その次に透湿性能、、とはならず、実はその次に来るのは「熱容量」になります。あまり聞かない言葉かもしれませんが、断熱材がどのくらいの熱エネルギーを蓄えられるかという指標です。
断熱性能を表す熱伝導率は0.02~0.05と、一番悪いものと一番良いものを比べても2.5倍くらいの差にしかなりませんが、例えばグラスウール16kgの熱容量は20kJ/㎥Kなのに対し、ロックウール50kgの熱容量は1,000kJ/㎥Kと、約50倍の差が開きます。
断熱材の厚みが十分あれば、断熱性能はグラスウールの方が高いのに、住んでみるとロックウールの方が温度変化が少なく快適という事が起こるわけです。
「熱容量」を生かすには?
じゃあ、ロックウールの方が良いのかというと、それも時と場合によります。
熱容量を活かすためには、それなりのまとまった体積が必要な為、薄い断熱厚ですと、その蓄熱量を生かすことなく終わってしまいます。
どのくらいの厚みから蓄熱量を期待できるようになるかを調べるためには、非定常計算が必要です。
非定常計算とは、単純な温度差による比較ではなく、外気温や日射量が刻々と変わる中で、中に伝わるエネルギーがどのくらいになるのかという、時間の概念も入れた性能計算の事です。
フリーの素材を改造した自作の非定常計算シートですが、こんな感じのグラフをつくったりして検討します。
もし、断熱材を論じるのであれば、こういう事まで計算してみて、あなたの計画であればこの断熱材とこの断熱材を組み合わせるのが良い、と結論づけるくらいでないと、本来ではないと思います。
「ウチはサツマイモだけしか扱わない!カレーでも肉じゃがでも、なんでもサツマイモを使って料理するんだ!サツマイモさえ使っていれば甘みも出るし、最高だ!」という料理店があったら違和感があると思いますが、断熱材も同じことです。
企画住宅で、同じものしか作らない会社であれば断熱材は一種類でもいいかもしれません。
しかし、注文住宅を建てたいのであれば、自分に合った断熱材を選んでいただきたいと思います。
それをきちんと計算して提案してくれる会社でないと、住んだ後に思ったよりも暑い、思ったよりも寒い、思ったよりも光熱費が掛かるという事になってしまいます。
その結果、今度はあなたが「○○の断熱材を使ったけど全然ダメ」みたいなことを書き込む側になってしまいます。
セルロースファイバーを使用する場合の注意点
そういえば、途中で置き去りにしてきた透湿性能の話ですが、そちらも外皮の湿気移動の計算を行い、断熱材の性能だけで不足する様であれば、防湿フィルムを外皮構造の中に入れてしっかりと施工し、断熱材の性能だけで足りるようであれば、防湿フィルムは施工しないという事になります。
ここで気を付けないといけないのがセルロースファイバーです。この断熱材だけは意図的に防湿層を抜く施工をする人が後を絶ちませんが、意図的に防湿層を抜く人で、ほんとうに非定常計算をして、大丈夫だと確信を持っている人は極々僅かです。
フリースのジャケットも雨に濡れると途端に冷たくなるように、そもそも断熱材は吸湿させると断熱性能が落ちるものです。そこをあえて吸湿させようとする事にどんな意義があるのでしょう。吸放湿性能が欲しければ、もっともっと即効性もあり、お手軽な素材が沢山あります。セルロースファイバーの良さを活かすのであれば、もっと別の設計と施工があります。とても良い断熱材だけに、この誤用は残念です。
さて、今回は断熱材のお話しでしたが、
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