専務コラム
専務コラム
ご存知の方も多いかとは思いますが、現在日本は家が余っています。
2015年度の世帯総数は国勢調査の抽出速報集計によりますと、52,015,400世帯だそうです。
平成29年の9月に本集計結果が出ますので、若干の誤差はあると思いますし、2年経った現在は、更に推移しているかと思います。
全世帯に対して、住戸が行きわたっていると家の充足率が100%、それよりも家の方が多いと、充足率が101%、102%、103%、、と上がって行きます。
100%を超えた部分を空き家率とも言います。現在の日本の空き家率は13.5%です。割合で見ると少なく見えますが、総世帯数にかけ合わせてみますと、実に7,022,079世帯。700万件を超える空き家が日本に存在するわけですね。
ご存知のように、日本の家は1日でも人が住むと、その価値は半減します。(日本人はまっさらなモノが好きですね)
もし、なんでもいいから家が欲しいという事だけであれば、無理に新築住宅を建てずとも、超買い手市場状態の700万件ある中古住宅に目を向けた方が賢明と言えます。
しかし、日本政府は未だに新築住宅に対する優遇措置を続けております。住宅ローン減税、高性能住宅に対する補助金、固定資産税の減税、ローン金利の割引、等々住宅を建てる方が受けられる恩恵はとても大きいです。
なぜ、700万件もの空き家があるこの時代に、新築を建てる事を推奨するのでしょうか。
大きく分けて2つの意味があります。
一つは経済対策。家は言わずもがな高額商品であり、1件家を建てた際の経済効果はそれなりにあります。地域の経済を潤す起爆剤として、家を買うという大きな消費行動をとってほしい。その為に補助金を出すというものです。
そしてもう一つは、国民のQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)向上の為です。戦後、家不足の時代において建てられてきた量産型住宅は、家の形をしているものの、耐久性、耐震性、健康性、省エネ性、どれをとっても世界に誇れるレベルの物ではなく(耐震性については日本独自の事情もありますが)日本人は自宅においてとても貧しい生活を送ってきました。厄介なのはそれが無自覚であるという事です。海外勤務の長い方などが日本に帰ってきた際、外国のような家、外国のような暮らしを求めて家づくりをするのは、海外の家に住むと、どんなに快適で豊かに暮らせるのかを体験してしまっているからです。
1つ目の経済対策については、一部とても残念な現状があります。資金の地域外流出です。家を建てるのは、その地域の人でありますが、家を建てる仕事をする人や家を建てる材料が地域の人や物でなかった場合、お金は地域に残る事がありません。
3000万円の家を建てた金額のうち、500万円も地域には残らず、大都市や海外にお金が流れて行ってしまう事も珍しくありません。本社が東京にある会社や、主要建材が輸入品であったりすると、そうなってしまいます。住宅は個人の資産なので、それが違法というわけではありませんが、地方再生につながれと思ってやっている住宅政策が空振りになってしまうのはとても残念です。特に地方自治体に置いて、住宅という大きな消費行動が自分たちの町の役に立たないという事は、税制的にも大きなダメージを受けます。
本社が地元に無い、量産型のメーカーで家を建てるのはもうどうしようもないとして、せめて地域の工務店で家を建てようとしている人のお金を地域の為に役立てる努力をするのが私たち工務店のできる事ではないかと思います。建材の地域産材化に取り組み、人材の地域産化に取り組む。その結果、地域の経済が回り始め、地域が豊かになり、家を建てた人の子供たちの仕事が地域に残るようになるわけです。
住まいから地域を豊かにする。いつも私が心がけ、そして周りに対しても発信している事ですが、そんな背景があっての事です。
QOLについてはまた次の更新で書いていきたいと思います。
住む人の生き方に関わるとても大切な部分ですね。